全文はCDブックレットに掲載しています。
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タイトルが「わたしのあおぞら」だと聞いたとき、僕の中には「日本晴れの青空」ではなく、少しさびしく、だが、あたたかい夕暮れ時の「あおぞら」が浮かんだ。
なぜだか知らないが、谷本さんの歌の風景はそれだった。
ホームレス支援23年。出会いは常に「あおぞら」の下だった。
出会いとは「出て行って会うこと」。出かけていく僕らを「あおぞら」が見守ってくれていた。
「青かん」という言葉をご存じか。「青空簡易宿泊所」のこと。
当事者は「野宿」と言わずそう言った。苦し紛れのユーモアか。
いや、「野宿」せざるを得ない者が、卑下に飲み込まれまいと誇りをかけてそう呼んだのだ。
ならば「あおぞら」は彼らの「わが家」に他なるまい。社会は彼らを排除し続けた。
そんな時、追われゆく者たちを無条件に受け止めたのは「あおぞら」だった。
「あおぞら」のように彼らと出会いたい。そんな支援をしたいと願ってきた。
このアルバムが、さびしくもあたたかいのは、「あおぞら」が天国へと通じているからに他ならない。
先に天へと上った人々が「あおぞら」の上から僕らを見守る。
力足らずの活動だが、そんな「あおぞら」に見守られ明日も続ける。
前作以上にこのアルバムは普遍性を保持する稀有なものとなった。
それは、ホームレス支援がもつ射程と軌を一にしている。
だから野宿者はもとより、愛する者を失った人、生きることに疲れた人、不安に眠れない人、そして津波によってすべてを奪われた人、原発事故被害者、すべての人々にこのアルバムを贈りたい。
NPO法人北九州ホームレス支援機構 理事長 奥田知志
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